「住宅ローン金利はこれからどうなる? 元証券マンの不動産会社代表が考える『金利のある時代』の住宅戦略」

※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。

私は不動産の仕事に就く前、長年、証券会社に勤務していました。

証券の世界では、株価、為替、金利など、日々さまざまな相場と向き合います。そこで身についたのは、「将来を正確に当てること」よりも、「予想が外れても大きく困らないように備えること」の大切さでした。

これは、住宅購入や住宅ローンにもそのまま当てはまります。

今後、金利が上がるか下がるかだけを考えていると、なかなか結論は出ません。大切なのは、金利が上がった場合でも無理なく返済できるか、その物件を今買うことがご家族の生活に合っているか、そして将来売却することになった場合にも価値を保ちやすい物件か、という点です。

今回は、2026年8月現在の金利環境を確認しながら、これから住宅を購入する方、すでに住宅ローンを返済している方が、どのように考えればよいかをお伝えします。

日本は「金利のない時代」から「金利のある時代」へ

2026年7月31日、日本銀行は政策金利を1.0%程度で据え置くことを決定しました。日本銀行は同時期に公表した展望レポートで、経済や物価の見通しが実現していけば、今後も政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく考えを示しています。

総務省が公表した2026年7月の全国消費者物価指数は、総合指数が前年同月比1.9%上昇、生鮮食品を除く指数が1.8%上昇でした。物価上昇が完全に収まったとはいえず、賃金と物価の動き、円相場、海外経済などを見ながら、日銀が追加利上げを検討する状況は続くと考えられます。

住宅ローンにも、すでに変化が表れています。2026年8月時点では、大手銀行の新規借入向け変動金利には、優遇条件適用後で年1%前後のものが見られる一方、全期間固定型の「フラット35」は、新機構団信付き、返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合、最も多い金利が年3.29%となっています。

変動金利は主に短期金利の影響を受け、固定金利は主に長期金利の影響を受けます。そのため、日銀が利上げをしてから両方が同時に同じ幅だけ上がるわけではありません。固定金利は、将来の利上げを先回りして動くこともあります。

これから金利はどうなるのか

私の見方では、中心となるシナリオは「金利は急激ではなく、段階的に上昇する」です。

日本銀行自身が追加利上げの可能性を示していることや、人手不足を背景に賃金と物価が上がりやすくなっていることを考えると、以前のような超低金利へすぐに戻ることを前提にするのは危険です。

ただし、金利が一直線に上がり続けるとも限りません。海外景気が大きく減速した場合、株式市場が急落した場合、地政学的な問題で企業や個人の支出が冷え込んだ場合には、利上げの休止や、長期金利の低下もあり得ます。

証券マンの目線で見ると、金利は「上がるか、下がるか」の二択ではありません。

基本シナリオは緩やかな上昇。物価や円安が再び強まれば上昇ペースが速くなる。景気が悪化すれば上昇が止まる。この3つを想定したうえで、どの状況になっても家計が耐えられる住宅ローンを組むことが重要です。

変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきか

私は、変動金利が危険で固定金利なら安心、あるいは変動金利の方が必ず得、という単純な考え方はしていません。

変動金利は、当初の返済額を抑えやすい反面、将来の金利上昇を借りる側が負担します。固定金利は、返済額を確定できる代わりに、当初から高めの金利を支払うことで金利上昇リスクを銀行側へ移しています。

つまり、固定金利と変動金利の差は、将来の安心を得るための「保険料」と考えることもできます。

収入に余裕があり、手元資金も十分に残せる方、金利が上がったときに一部繰上返済ができる方は、変動金利を選びやすいでしょう。一方、教育費など今後の支出が大きい方、毎月の返済額が増えると家計への影響が大きい方、返済額を確定させて安心したい方は、固定金利を選ぶ意味があります。

判断が難しい場合には、借入額の一部を固定金利、残りを変動金利にする方法もあります。金利上昇リスクを抑えながら、当初の返済負担もある程度軽くできるためです。ただし、契約が複数になれば諸費用や管理の手間が増えることもあるため、条件の確認が必要です。

4,000万円を借りた場合、金利1%の差はどのくらいか

住宅ローン4,000万円を35年間、元利均等返済、ボーナス返済なしで借りたと仮定すると、毎月返済額の目安は次のようになります。

金利毎月返済額の目安年間返済額の目安
年1.0%約11万2,900円約135万5,000円
年1.5%約12万2,500円約147万円
年2.0%約13万2,500円約159万円

年1.0%から年2.0%になると、毎月の負担は約2万円、年間では約23万5,000円増える計算です。

実際の変動金利型住宅ローンでは、金利や返済額の見直し方法が金融機関や商品によって異なるため、この表と全く同じ動きにはなりません。それでも、「金利が1%上がったら、わが家の負担はいくら増えるのか」を確認する目安にはなります。

銀行が貸してくれる金額と、無理なく返せる金額は違う

住宅購入で最も注意したいのは、金融機関の審査で借りられる上限額を、そのまま購入予算にしてしまうことです。

銀行は現在の年収や他の借入状況などをもとに融資額を審査します。しかし、将来の教育費、車の買い替え、建物の修繕、マンションの管理費や修繕積立金の上昇、退職後の収入まで、すべてを考慮してくれるわけではありません。

これから変動金利を選ぶ場合は、現在の適用金利だけでなく、少なくとも金利が1%上がった場合の返済額を試算し、それでも毎月貯蓄を続けられるかを確認したいところです。

住宅ローンの返済は長期間続きます。「今払えるか」ではなく、「環境が変わっても払い続けられるか」で考えることが大切です。

繰上返済は、急ぎすぎない方がよい場合もあります

金利が上がると、できるだけ早く繰上返済をしたくなる方も多いと思います。

繰上返済には、将来支払う利息を確実に減らせるというメリットがあります。投資のような価格変動もなく、効果が分かりやすい方法です。

ただし、手元の現金をほとんど使い切ってしまうのはおすすめできません。病気、失業、修繕、教育費などで急にお金が必要になったとき、住宅ローンより高い金利で別の借入をすることになれば、本末転倒だからです。

証券会社に勤務していた経験から申し上げると、資産運用で大切なのは、利回りだけではなく「必要なときに使えるお金を残しておくこと」です。

繰上返済をする場合でも、当面の生活費と近い将来に必要となる資金を確保し、そのうえで余裕資金を返済に回すことが基本です。住宅ローンの金利、住宅ローン控除の残存期間、手元資金、運用状況を一緒に見て判断する必要があります。

すでに変動金利で借りている方へ

金利上昇のニュースを見て、条件を比較しないまま慌てて固定金利へ変更するのはおすすめできません。

固定金利はすでに将来の金利上昇をある程度織り込んでいるため、変更した時点から返済負担が大きく増える可能性があります。現在の借入残高、残りの返済期間、現在の優遇幅、固定金利へ変更した場合の金利、手数料を比べることが先です。

残高が少ない方や返済期間が短い方は、金利が多少上昇しても影響が限定的な場合があります。反対に、残高が大きく返済期間も長い方は、固定金利への変更だけでなく、一部繰上返済や毎月の積立額の見直しも含めて検討する価値があります。

金利だけを理由に、住宅購入を急ぐ必要も諦める必要もありません

「さらに金利が上がる前に買わなければ」と焦る必要はありません。一方で、「金利が下がるまで待とう」と決めつけるのも得策とは限りません。

仮に金利が下がっても、建築費や人件費の上昇によって物件価格が上がれば、総負担は軽くならないことがあります。反対に、金利上昇によって購入希望者が減り、物件価格や売買条件を交渉しやすくなる可能性もあります。

住宅購入では、金利だけではなく、物件価格、管理状態、立地、将来の売りやすさ、必要なリフォーム費用まで含めて判断することが重要です。

金利は住宅購入を決める大切な要素ですが、判断材料の一つにすぎません。

まとめ

住宅ローンは、不動産に付随した金融商品です。

だからこそ、物件を見る目と、金利や資金計画を見る目の両方が必要になります。

これからは、低い金利を探すだけではなく、金利が上がった場合の返済額、手元に残す現金、将来売却する可能性まで考えたうえで、住宅ローンを選ぶ時代です。

私は、長年の証券会社勤務で培った金融の視点と、不動産取引の実務経験の両方から、お客様ごとに無理のない購入方法を一緒に考えております。

住宅購入や売却、住宅ローンについて迷われている方は、物件を決める前の段階でもお気軽にご相談ください。


参考資料

日本銀行「当面の金融政策運営について」(2026年7月31日)

日本銀行「展望レポート・ハイライト(2026年7月)」

総務省統計局「2026年7月分 消費者物価指数」

住宅金融支援機構「フラット35 最新の金利情報」

三菱UFJ銀行「住宅ローン金利」

三井住友銀行「住宅ローン」

みずほ銀行「住宅ローン」

※本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、特定の金融商品や金利タイプを推奨するものではありません。住宅ローンの適用金利や条件は、金融機関、審査結果、借入時期などによって異なります。

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